2013年3月8日金曜日

「還れぬ家」


 佐伯一麦「還れぬ家」読了。深々とした感動に包まれた。認知症を患った父親の死を題材とした私小説であっても、露悪的であったり自己弁護には陥らず、ある種の客観性を保った現代性を感じさせる。執筆の途中で東日本大震災が起き、現在進行形の物語形式から過去を回想する形に修正することになるが、そのためこの小説を書こうと決意する自分が登場するという、失われた時を求めてのような不思議な時制が出現したりしている。 
 まだ3月だが、今年読む本ののベスト1になる可能性が高い。


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