笠井潔「煉獄の時」読了
矢吹駆シリーズ11年ぶりの新作。舞台はフランスで、サルトル、ボーヴォワール、シモーヌ・ヴェイユ、ジョルジュ・バタイユなどを髣髴とさせる人物が次々と登場して、フランス文学をかじった僕としては楽しく読めた。
特にサルトルをモデルとしたジャン=ポール・クレールはまるでサルトル自身が語っているようなリアリティがあった。でも、フランス文学に全然縁がない人が読んでもおもしろいのかな。
殺人事件の謎解きの合間に哲学談義というか政治談議が延々と続くのはいつものとおり。第1次大戦から第2大戦にかけてのヨーロッパ裏面史が知れたのはよかった。
フランスがナチスに抵抗した戦勝国というのはまやかしで、実は国民のほとんどがナチスの傀儡政権に協力していた、ということはカズオ・イシグロなども指摘しているけれども、そのことが詳しく論じられている。事件の謎解きも秀逸である。
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