2019年4月23日火曜日

「武蔵野をよむ」


 赤坂憲雄「武蔵野をよむ」読了

 本作を読むに先立って国木田独歩の「武蔵野」をKindleで購入して臨んだ。

 実は独歩の「武蔵野」にはそれほど感銘を受けず、主人公に対して「田園の憂鬱」を読んだときのような"いい気なもんだ"的な印象すら抱いた。そもそも僕は高等遊民的な人物に対してシンパシーを感じないのである。

 しかしながら、赤坂憲雄の読解により、雑木林をいいと感じる美意識はそれまでの日本人にはなく、独歩が発見したものであること。武蔵野の自然は実は人の手がかけれたもので、独歩はそれを承知で描いていること。独歩は「武蔵野」で書かれた時期に不幸な恋愛をしているが、それを巧妙に隠蔽していること、などが数々の資料をもとに明らかにされる。

 1万5千字程度の短い原作からよくこれだけの批評を書けるもの。独歩の「武蔵野」を発見したというより、赤坂憲雄のプロの仕事を感じた次第である。

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